二重入力業務システムRPA業務自動化費用相場

二重入力をなくす方法|Excel・RPA・システム連携の違いと費用

執筆: 谷岡 優士(株式会社FrameScript 代表取締役)

この記事でわかること

  • 「二重入力」がなぜ起きるのか、その構造
  • なくす方法「Excel関数・マクロ」「RPA」「システム連携」3つの違いと費用
  • 手軽に見えるRPAの落とし穴
  • 外注を検討する場合の費用の考え方

「同じお客様の情報を、見積書にも台帳にも別々に入力している」「紙の伝票を、あとでパソコンに打ち直している」——こうした「二重入力」の相談は、業種を問わずよく受けます。この記事では、二重入力がなぜ起きるのかを整理したうえで、なくす方法の選択肢と費用をまとめます。

二重入力が起きる構造

二重入力は、担当者の注意不足で起きているわけではありません。多くの場合、入力する窓口がもともと複数に分かれているという業務の構造そのものが原因です。1つずつ見ていきます。

拠点・部署ごとに同じ情報を入力し直す

営業が受注情報をExcelに入力し、経理が同じ情報を会計ソフトに入力し直す。店舗が売上を専用レジで記録し、本部が集計のために別のシートへ転記する。システムやファイルが部署ごとに独立していると、同じ情報を何度も入力する構造が自然にできあがります。

紙の伝票を後でパソコンに打ち直す

現場で紙の伝票や作業日報に記入し、事務所に戻ってからパソコンに打ち直す。建設業・製造業・運送業などでよく見られる流れです。現場での記入と、事務所での入力とで、同じ情報に2回分の手間がかかっています。

FAX・紙・メールと窓口が分かれている

注文がFAX・電話・メール・Webフォームなど複数の経路で届き、それぞれ形式がバラバラなまま、担当者が1つの管理システムやExcelにまとめて入力し直している状態です。窓口が増えるほど、あとでまとめ直す作業も増えていきます。

こうした構造は、「気をつければ直る」個人のミスではありません。入力する場所が複数ある限り、二重入力は業務のどこかに残り続けます。Excel管理そのものが限界に近づいているサインについては、Excel管理の限界サイン7つでも整理しています。

放置すると何が起きるか

二重入力をそのままにしておくと、次のようなコストが少しずつ積み上がっていきます。

  • 時間のコスト:同じ情報を複数箇所に入力する時間そのものが、毎日・毎週積み重なります
  • ミスのコスト:転記のたびに、桁の打ち間違いや数値のズレが紛れ込みやすくなります
  • 突き合わせのコスト:システムごとに数字が微妙に違うと、どちらが正しいかを確認する作業まで発生します

1件あたりの手間は数分でも、入力する人数・件数と続く年数をかけ合わせると、無視できない時間になります。特に、入力に関わる人数が多い部署ほど、積み重なる時間は大きくなっていきます。

なくす方法は3つある

二重入力をなくす方法は、大きく3つに分かれます。それぞれ「どこまでできて、どこで詰まるか」が異なります。

Excelの関数・マクロで頑張る

VLOOKUPやXLOOKUPなどの関数、あるいはマクロ(VBA)を使い、あるシートに入力したデータを別のシートへ自動で反映させる方法です。追加費用がかからず、すぐに始められるのが利点です。ただし、シートの構成やファイル名が変わると数式が崩れやすく、複雑な条件分岐は関数だけでは対応しきれません。

RPAで自動転記する

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、人がパソコン画面で行うクリックや入力の操作を記録し、自動で繰り返すツールです。既存のシステムを改修せずに、画面上の操作だけを自動化できるのが特徴です。システム同士を直接つなげない場合の「橋渡し」として使われることが多い方法です。落とし穴は後の章で詳しく解説します。

システムを連携させる

Excelやシステム同士をAPIでつないだり、複数の業務で使う入力画面を1つに統合したりして、そもそも同じ情報を2回入力しなくて済む状態を作る方法です。開発費用はかかりますが、入力の手間そのものを構造から減らせるのが特徴です。

3つの方法に共通するのは、手軽な方法ほど「今の入力作業を自動で肩代わりする」対応であり、根本的な入力窓口の数は変わらないという点です。次の章で、種類ごとの違いと費用を整理します。

自動化・連携の選択肢は幅がある

一口に「RPA」「システム連携」といっても、実際にはいくつかの種類に分かれます。検討の前提として整理しておきます。

種類 イメージ
デスクトップ型RPA 1台のパソコン上の操作を自動化する。小さく試しやすい
サーバー・クラウド型RPA 複数のパソコンやサーバー上でシナリオを動かす。安定しやすいが費用は上がりやすい
API連携・システム統合 システム同士を直接つなぎ、入力そのものを1箇所に集約する

同じ「RPA」という言葉でも、動かし方によって費用も安定性も変わります。検討時は「1台のパソコンだけで完結するか」「複数の拠点・部署にまたがるか」を最初に整理しておくと、選択肢を絞りやすくなります。

3つの方法を比較する

方法 初期費用 月額 向いているケース 保守は誰がするか
Excel関数・マクロ ほぼ0円 0円 少人数・シンプルな転記で完結する場合 作った本人(属人化しやすい)
RPAで自動転記 数万円〜(製品による) ライセンス費(製品による) 既存システムを改修できない・画面操作の自動化で足りる場合 シナリオを作った担当者
システム連携(外注) 30万円〜(規模による) 保守費 月3万円〜 入力窓口自体を減らしたい・長期的に安定させたい場合 開発会社

Excel関数・マクロとRPAは初期費用を抑えやすい一方、運用が続くほど「誰が保守するか」という属人化の問題が残ります。システム連携は初期費用がかかりますが、入力窓口を構造から減らせる分、長期的な安定を見込みやすい方法です。

それぞれの費用を詳しく

Excel関数・マクロ

費用はほぼかかりません。ただし、対応できる範囲は限定的です。シート構成や入力ルールが変わると数式が崩れやすく、複数のブックをまたぐ集計は工数が増えます。マクロを組んだ本人が異動・退職すると、修正できる人がいなくなるケースもあります。少人数で、入力項目が固定的な業務であれば、この方法で十分なこともあります。

RPA

初期費用は、ツールの導入・シナリオ作成にかかる費用として数万円〜が目安です(製品・契約形態によって幅があります)。月額はライセンス費用として発生し、製品によってユーザー数や実行環境の数に応じた課金体系が採用されています。小規模な導入であれば低めの費用で試せる製品もありますが、対象システムの数や自動化する業務が増えるほど、月額・年額のライセンス費用も上がっていく傾向があります。既存システムを改修せずに済むため、着手のハードルは比較的低い方法です。ただし、画面変更への弱さと属人化のリスクには注意が必要です(次の章で詳しく解説します)。

システム連携(外注)

初期費用は30万円〜と、3つの中で最も高く感じられます。ただし、入力窓口自体を1つに統合するため、運用を続けるほど、手作業や調整の手間が減っていく構造です。月額はユーザー数に依存せず、保守費用(月3万円〜)で完結します。長く使う・複数部門で使うほど、トータルで見た負担は小さくなっていく傾向があります。費用の内訳は業務システム開発の費用相場でも解説しています。

RPAの「自動化した気になる」落とし穴

RPAは初期費用を抑えつつ、既存システムに手を入れずに自動化できる便利な選択肢です。ただし、導入前に知っておきたい落とし穴もあります。

  • 画面のレイアウトが変わると止まる:RPAの多くは、画面上のボタンや入力欄の位置・見た目を認識して操作を再現します。対象システムのバージョンアップやブラウザの更新で画面の見た目が変わると、シナリオが正しく動かなくなることがあります。
  • 作った人しか直せない=属人化が移動するだけ:シナリオの設定にはツールごとの知識が必要です。作った担当者が異動・退職すると、誰も直せなくなる状態が起きます。これは「入力作業の属人化」が「シナリオ保守の属人化」に場所を変えただけで、根本的には解決していません。
  • 複雑な条件分岐には向かない:例外処理が多い業務や、判断を伴う入力は、RPAだけでは対応しきれないことがあります。

一方で、RPAを一方的に否定するべきではありません。対象のシステムに手を入れられない場合(外部の官公庁サイト・古いシステムでAPIが用意されていない場合など)、RPAは現実的な橋渡し役になります。自社で管理しているシステム同士であれば、画面操作を自動化するより、システム連携で入力窓口自体を減らすほうが、長期的には安定しやすいというのが実務での感覚です。

どちらが向くか

Excel・RPAでの自動化が向くケース

  • 入力する人数・件数が少ない
  • 対象のシステムに手を入れられない(外部サービス・レガシーシステムなど)
  • まず小さく試して、効果を見てから判断したい
  • 業務のやり方自体がまだ固まっておらず、頻繁に変える見込みがある

システム連携(外注)が向くケース

  • 複数の部門・拠点で同じ情報を入力している
  • 画面変更のたびにメンテナンスが発生するのを避けたい
  • 長期間(数年単位)使う前提がある
  • 入力の担当者が変わっても業務が止まらないようにしたい

迷う場合は、「今の入力体制が5年後も変わらないか」を基準に考えると判断しやすくなります。担当者や業務量が変わる見込みがあるなら、属人化しにくいシステム連携に寄せておくと、あとから作り直す手間を減らせます。

外注する場合の費用の考え方

システム連携によって二重入力をなくす場合、費用は対象範囲の広さによって変わります。中小企業向けの業務システム開発は、おおむね次のレンジに分かれます。

規模 費用の目安 二重入力解消の対象
業務自動化・小規模ツール 30万円〜 特定の転記作業1つを自動化する
シンプルな業務ツール 50万円〜 1つの業務の入力窓口を1つに統合する
顧客管理・案件管理など 150万円〜 複数部門の入力を1つのシステムに集約する
複数業務の統合 250万円〜 全社的な二重入力を解消する

まずは「特定の転記作業1つ」から着手し、効果を確認しながら対象範囲を広げていく進め方が現実的です。公開後は、保守費用(月3万円〜)が別途かかります。規模別の内訳や、費用がどこで決まるかは業務システム開発の費用相場で詳しく解説しています。顧客管理に絞った自作・外注の判断は顧客管理システムを自作するか外注するかも参考になります。

外注で失敗しない進め方

外注を検討する場合、次の4点を押さえると失敗が減ります。

  1. 入力ポイントを洗い出す:どの業務のどこで、同じ情報を何度入力しているかを一覧化してから相談すると、見積もりの精度が上がります。
  2. 全部を一気に作り直さない:最も手間のかかっている入力窓口から着手し、効果を見ながら広げる進め方があります。不便な部分だけを先に切り出す考え方は既存ツールに「あと一歩」足りないときでも解説しています。
  3. 発注先の継続性を確認する:個人や小規模の開発会社に頼む場合、担当者が変わっても運用が続けられるか(ソースコード・ドキュメントの扱い)を契約段階で確認しておくと安心です。詳しくは個人・小規模の開発会社にシステム発注して大丈夫かで整理しています。
  4. 小さく始めて育てる:最初から全社的な統合を目指さず、効果の大きい入力窓口から段階的に広げていくと、初期費用と手戻りの両方を抑えやすくなります。

FrameScriptの費用の考え方

参考までに、当社(FrameScript)の場合の目安です。特定の転記作業を自動化する小規模なツールは30万円〜、複数部門の入力窓口をまとめる規模は150万円〜を目安にお受けしています。ご相談の段階では、いきなりシステム連携を提案するのではなく、「Excelの改善で足りるのか」「RPAで橋渡しすれば十分なのか」から一緒に整理することもあります。当社ではこれまで、祭典の桟敷席・会員管理システムの開発や、地元製造業のホームページ制作・保守を手がけてきました。

よくある質問

Q. 二重入力をなくすには何から始めればいいですか? まずは「どこで、同じ情報を何度入力しているか」を洗い出すことから始めます。全部を一気に解決しようとせず、最も手間がかかっている1箇所から着手するのが現実的です。

Q. RPAとシステム連携はどちらが安いですか? 初期費用はRPAの方が抑えやすい傾向です。ただし画面変更のたびに調整が発生するため、数年単位の運用まで含めると、必ずしも安くなるとは限りません。長く使う前提なら、システム連携の方がトータルで安定しやすい傾向があります。

Q. Excelのマクロだけで二重入力はなくせますか? 同じファイル内・少人数の運用であれば、マクロで転記を自動化できます。ただし別のシステムをまたぐ場合や、担当者が変わる場合は、マクロ自体が属人化のリスクを持つ点に注意が必要です。

Q. 二重入力をなくすのにどれくらいの費用がかかりますか? 特定の転記作業だけを自動化する小規模なものなら30万円程度から検討できます。複数部門にまたがる場合は150万円〜が目安です。規模別の費用感は業務システム開発の費用相場で詳しく解説しています。

Q. RPAを導入すれば属人化は解消しますか? 必ずしも解消しません。シナリオを作った担当者に知識が集中するため、「入力作業の属人化」が「シナリオ保守の属人化」に移動するだけになるケースもあります。

Q. Excelで管理しているデータをそのままシステムに移行できますか? 多くの場合、移行できます。既存のExcelデータを取り込む形で構築すれば、入力し直す手間を減らせます。

Q. 二重入力の解消と、業務システム化はどう違いますか? 業務システム化は業務全体を対象にした広い括りで、二重入力の解消はその中の一つの切り口です。いきなり全体を作り替えるのではなく、まず二重入力という具体的な困りごとから着手し、効果を確認しながら業務システム化へ範囲を広げていく進め方もあります。

Q. どのタイミングでシステム連携を検討すべきですか? 複数の部門・拠点で同じ情報を入力している、画面変更のたびにRPAの調整が発生している、数年単位で使い続ける前提がある——こうした状態が重なってきたタイミングが、システム連携を検討する目安です。

まとめ

二重入力は、担当者の注意力の問題ではなく、入力する窓口が複数に分かれている業務構造そのものが原因です。なくす方法は、Excel関数・マクロ、RPA、システム連携(外注)の3つに分かれます。

少人数・シンプルな転記であれば、Excelの関数やRPAで足りることもあります。ただし画面変更への弱さや、担当者依存という属人化のリスクは残ります。複数部門で同じ入力が発生している、長期間使う前提がある、という場合は、入力窓口自体を1つにするシステム連携の方が、長期的には安定します。

どの方法を選ぶにしても、最初の一歩は「どこで、何度、同じ情報を入力しているか」を洗い出すことです。そこが見えてはじめて、Excel・RPA・システム連携のどれが自社に合うかを判断できます。